ふとした時に疑問に思ったことを、小崎先生に聞いてみました。
私だけが知っているのはもったいないなと思い、サイトに公開することを小崎先生にも了解して頂き、移植についての疑問に対する先生からの答えを掲載することにしました。
個々の移植腎の状態は本当にそれぞれなので、あくまで一般論としてご覧下さい。

サイトメガロウィルス(以下CMV)と移植腎との関係について

1)CMVが持続感染すると、勿論熱が出たりなどの感染症状があった場合ですが、治療薬としてGancyclovir(デノシン)を使用します。デノシン自体に腎毒性がありますからこれを長期に使った場合腎機能に影響を与えるかもしれません。しかしながらプログラフ、ネオーラルにもご存知のように腎毒性がありますから、これらの薬剤が移植腎にどの程度障害を与えるかは人によって異なるので一概にはいえません。薬剤による腎毒性の場合には、その薬剤の中止、終了、減量によって改善することが多いようです。勿論例外もあり、腎機能が回復しない場合もありますがこれも個々の移植腎の状態によりますので、こうだからこうだというのは難しいといえるでしょう。

2)CMV感染のあとは、拒絶反応が高率におこります。わかりやすく書きますと、これは感染症のため従来の免疫抑制は若干弱め、自らの免疫(いわゆる抵抗力)を幾分か復活させデノシンとの共同作業でCMV感染を克服することを図ります。しかしなが
ら、感染症が治癒するとともに、復活させた自らの抵抗力によって拒絶反応を引き起こしてしまうことがあります。このような形で拒絶反応を反復していくとやはり移植腎機能に影響を与えることは十分にあります。勿論この場合でも個々の移植腎の状態によります。

3)CMV感染による腎障害の報告は1980年代の報告にはありますが、デノシンが臨床使用されるようになり、CMVがきちんと治療されるようになってからはCMVそれ自体による腎障害が遷延するということはないように思います。

以上のことから、CMV感染が直接に腎機能低下を引き起こすことはちゃんと治療をすればないように思いますが、それに伴う因子で腎障害は起こりうると思います。でも何度も言いますがそれは個々の移植腎の状態によりますので一元的にいうのは難しいでしょう。

京都大学 移植外科
小崎浩一  先生より

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